
動物園ができた理由って何だろう?
日常では実物を見ることのできない希少な異国の動物を集めてきて飼育し、お客さんの目の前で安全に実物を見せる。お客さんは動物の仕草なども楽しむことができて、動物園は動物の購入費用、餌代や維持費を確保できる。そういうウィンウィンの関係で成り立ってきた。そして、動物園関係者は飼育や繁殖、治療のノウハウを蓄積できる。
動物園運営の歴史の中で、ニーズも変化してきた。見世物的な単純な展示から、生態を感じることのできる展示、ストレス軽減のため自然下での生息環境を意識した展示、さらには固有種保護、遺伝子確保のための施設への転換である。動物園の保有動物の遺伝子情報などは共有化され、種によっては動物園内で繁殖をさせる活動も盛んである。また、自然界で絶滅危惧種になってしまった動物たちの遺伝子を細胞培養し復活させる研究に取り組める。動物を管理下に置けているという有利性は大きい。
一方で、アフリカの特定の地域では飢饉のため象を殺して食べたため頭数が減少したり、有料でライオンなどのハンティングができたりと、人間側の都合で野生動物が不幸な目にあっているという現実もある。世界的にみれば、人間と野生動物とのかかわり方は千差万別あり、一つの定まった価値観があるわけではない。

動物愛護の視点で動物園を見たときに、「野生動物は自然界で生活するのがよく、動物園の環境(狭い、動物間の接触が少ない)は不幸である」という考え方もある。 現状擁護派は、「囲われた野生動物は、行動制限はあるが採食に困らず飢えることはない。上階層の捕食動物の攻撃におびえることもない。衛生的な環境に置かれ病気になる可能性も自然界より少ない。自然界よりは長生きする確度は高い。決して不幸ではない。」また、一歩譲って「過去の過ちは認めるが、これまでの飼養期間を元に戻すことは難しい。自然には帰せない。」と考える。
群れで行動する動物であれば、仲間とのコミュニケーションは非常に重要であると考えられ、動物園の環境は不幸という見方もできよう。現在動物園で飼育されている動物たちを野生に戻すことは不可能であり、適正な環境で飼い直すことも非常に難しいと思われるが、どこかで転換する必要はあろう。

種の維持や絶滅危惧の状況や野生動物毎の特性に鑑みたアニマルウェルフェアの観点から、種によっては動物園間の協調で集約化することも対応の方法としてありそうである。国内だけではなく世界的にも、動物園関係者自身があるべき姿について議論していると推察されるが、目指す方向性を知りたいところである。
別の視点から、映像技術の進歩があり、今までのように希少な野生動物を捕獲し大移動させ目の前で生体を見せることの意義とニーズがどこまであるのかを改めて考えても良いのではないか。希少な野生動物を地球の資源として大切にすることを第一とすれば、現地の映像を3DメガネやVRゴーグルなどで見る臨場感ある体験で置き換えることもできるのではないかと思う。
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