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改めて知ってほしい狂犬病のこと

先日、こんなニュースがありました。
狂犬病ワクチン、通年化を検討 厚労省、接種率の向上目指す(共同通信)
背景としては、狂犬病予防注射の接種率が低下しているということがあるようです。
毎年4・5・6月は狂犬病予防注射月間と定められ、法律で義務づけられている狂犬病の予防接種ですが、『なぜ必要なのか』や『このまま低下し続けるとどうなってしまうのか』、今回はそんな狂犬病についてのお話です。

1 狂犬病とは

(1)原因と人への感染経路

狂犬病は、狂犬病ウイルスによる病気です。
狂犬病ウイルスは、犬だけではなく、すべての哺乳類に感染します。

狂犬病にかかった動物の唾液中にウイルスが含まれるため、特に咬まれることで人に感染します。
アジアやアフリカでは犬が主な感染源ですが、他の地域ではコウモリやキツネ、アライグマなど様々な動物が感染源となっています。

(2)狂犬病の発生国

狂犬病は、日本、アイスランド、オーストラリア、ニュージーランド、フィジー諸島、ハワイ、グアムを除いた、全世界に分布します。
今でも世界中で毎年5万人以上が死亡する病気で、決して過去の病気ではありません。

日本は数少ない狂犬病の清浄地域(発生がない地域)の1つですが、同じく狂犬病の清浄地域とされていた台湾で2013年に狂犬病ウイルスに感染した野生のイタチアナグマが確認されました。
狂犬病の発生状況(厚生労働省健康局結核感染症課 2016年6月28日作成)
台湾で狂犬病の野生動物が確認されました(厚生労働省検疫所 2013年7月17日更新)

『清浄地域だから』『島国だから』といって安心することはできません。

(3)狂犬病の症状

ウイルスに感染してから
発症するまでの期間
症状
ヒト1~3か月程度【前駆期】
発熱、食欲不振、咬まれた場所の痛みや痒み
【急性神経症状期】
不安感、恐水症、恐風症、興奮性、麻痺、幻覚・精神錯乱
【昏睡期】
昏睡(呼吸障害によりほぼ100%死亡)
イヌ2週間~2か月程度【前駆期】
性格の変化と異常行動
【狂躁期】
興奮状態、光や音に対する過敏な反応
【麻痺期】
全身の麻痺症状による歩行不能、嚥下困難、流涎、昏睡状態になり死亡

狂犬病は発症すると効果的な治療法はありません。
万が一、狂犬病の流行地域で犬などに咬まれた場合は、発症を予防するために直ちにワクチンを接種することで発症が抑えることができます。

2 日本での狂犬病予防対策

(1)犬の登録

犬の飼い主は、その犬を飼い始めてから30日以内に市区町村に犬の登録をしなければなりません。
また、登録をした際に交付される『鑑札』を犬に付けなければなりません。

万が一、日本で狂犬病が発生した場合に、飼い犬がどこに何頭いるか把握しておくこくことで、素早い対応につながります。

(2)狂犬病予防注射

犬の飼い主は、1年に1回、毎年、自分の飼い犬に狂犬病の予防注射を受けさせなければなりません。
また、注射をした際に交付される『注射済票』を犬に付けなければなりません。

飼い犬に狂犬病の予防注射をすることで、犬でのまん延を予防することができ、人への被害を未然に防ぐことになります。

(3)検疫

日本国内に犬を連れてこようとする場合、空海港で輸入検査を受けなければなりません。なお、輸出側の国・地域においても所定の手続を経ないと日本に連れてくることができません。

ペットの輸出入について、詳しくはこちら(動物検疫所)をご覧ください。

3 狂犬病予防注射の必要性

狂犬病予防法が制定される以前は、日本国内では狂犬病がまん延し、人も死亡していました。
その後、狂犬病予防法に基づき、犬の登録、予防注射などが徹底され、わずか7年で日本国内から狂犬病を撲滅することができました。
しかし、登録や予防注射がきちんと実施されなければ、またいつ日本国内で狂犬病が発生・まん延してもおかしくありません。

(1)接種率70%を下回ると…

狂犬病予防注射の接種率は、昭和60(1985)年以降、ほぼ100%を維持していましたが、平成8(1996)年頃から減り始め、令和4(2022)年度には70.9%まで低下しました。
(出展:厚生労働省「犬の登録頭数と予防注射頭数等の年次別推移」)

WHO(世界保健機関)は、狂犬病のまん延を防ぐためには、接種率70%以上を保つことが必要としており、接種率がこのまま低下すると国内に狂犬病ウイルスが侵入した場合、感染拡大を防ぐことができません。

(2)室内飼いでも必要なの?

大前提として、狂犬病の予防接種は法律上の義務なので、『室内飼いだから予防接種をしなくていい』ということにはなりません。
また、例えば、こんなことはないでしょうか?

  • 外に散歩に行く
  • 動物病院やドッグラン・ドッグカフェなど他の犬がいる場所に行く、家に他の犬が遊びに来ることがある
  • トリミングやペットホテルに預けることがある

ほとんどの犬が少なくともどれか1つは当てはまると思います。
普段は室内で過ごしていても外に出ることがある、他の犬と接触することがある場合、万が一を考えておくべきです。

狂犬病を発症すると、愛犬は助かりません。また、狂犬病はウイルスに感染してから発症まで時間がかかるため、気付かないうちに『発症していないが狂犬病ウイルスに感染している動物』と接触していることがあります。
狂犬病予防接種を受けないことは、飼い犬、飼い主ばかりか周りの様々な人も狂犬病の危険にさらすことになります。

(3)日本に狂犬病が入ってくる可能性

東京大学農学生命科学研究科 杉浦特任教授の研究では、日本に狂犬病が入ってくる可能性は極めて低い確率であるとされています。
必要以上に恐れる必要はありませんが、

  • 日本と地理的に似たような清浄地域だった台湾でも狂犬病が発生したこと
  • 狂犬病が発生している国・地域と日本を、多くの人や動物が往来していること
  • 検疫の際の虚偽申請など動物の不法な入国が行われると、侵入リスクが高まること
  • 日本が清浄地域になることができたのは、犬の登録や狂犬病予防接種といった飼い主の義務が適切に果たされていたからだということ

を忘れてはなりません。

4 まとめ

狂犬病は、日本では徹底した対策により『過去の病気』になりつつあります。
しかし、世界に目を向けると毎年多くの方が狂犬病で亡くなっており、万が一、狂犬病ウイルスが日本に入ってくれば、現在の接種率では狂犬病のまん延を防ぐことは難しいかもしれません。
『法律で決められている義務だから』ということはもちろんですが、飼い主の方1人1人が『飼い主の責任を果たす』『登録と予防接種があるから日本が清浄地域でいられる』という認識を持っていただくことが、これからも日本が清浄地域でいるために大切なことです。

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